SSブログ

「人生は、グミ・チョコレート・パイン」 銀杏BOYZが教えてくれた ~グミ・チョコレート・パイン グミ編/チョコ編/パイン編~ [本のある生活]

  あいつらが簡単にやっちまう30回のセックスよりも
  「グミ・チョコレート・パイン」を青春時代に1回読むってことの方が
  僕にとっては価値があるのさ

       十七歳(・・・cutie girls don’t love me and punk.) By 銀杏BOYZ


銀杏BOYZが教えてくれたこの本が、
銀杏BOYZが教えてくれたあの熱を、
銀杏BOYZに教えていたんだ、きっと。


こんなにも本を読んでアツくなったのは、初めてだ。
まるで、LIVE会場の熱につつまれたみたいだ。


17歳をとっくに過ぎたこの自分を、
17歳の衝動が襲う。

銀杏を初めて聴いたときに似た、
なんだか分からない、暴れ狂う力が、体の中に生まれた。

抑え切れなくて、夜道を一人、
「駆け抜けて性春」を熱唱しながら帰った。






  「人生は、グミ・チョコレート・パイン」



グミ・チョコレート・パイン グミ編 (角川文庫)

グミ・チョコレート・パイン グミ編 (角川文庫)

  • 作者: 大槻 ケンヂ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 文庫



グミ・チョコレート・パイン チョコ編 (角川文庫)

グミ・チョコレート・パイン チョコ編 (角川文庫)

  • 作者: 大槻 ケンヂ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2000/09
  • メディア: 文庫



グミ・チョコレート・パイン パイン編 (角川文庫)

グミ・チョコレート・パイン パイン編 (角川文庫)

  • 作者: 大槻 ケンヂ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 文庫


  「あたしはね、人生ってグミ・チョコレート・パインだと思うの」

  「自分の出した手が相手を負かすことがあって、
   でもその手は必ず一番強いわけじゃなくて、
   負かした相手の手より弱い手で負けちゃったり。
  
   そうして勝ったり負けたりしてるうちに、
   いつの間にかくっきりと勝者と敗者とが別れてしまうのよ。
   生きてくって、そういうことなんだと思う。」


人生というジャンケンに、ひたすらチョキで勝ちまくって、
チ・ヨ・コ・レ・イ・ト、チ・ヨ・コ・レ・イ・ト、チ・ヨ・コ・レ・イ・ト…。
どんどんどんどん先に進んでしまう少女。

負け続け、負け続け、たまにまぐれで勝ったとしても、
グーで2歩しか進めない少年。

離れ続けていく、二人の距離。
永遠に縮まることのない、少年と少女の距離。

置き去りにされ、忘れ去られる少年。
少女にとって、まわりにとって、世界にとって、
不必要な存在なんだと、内向していく少年。


自己嫌悪とオナニーの毎日。


  「五千四百七十八回。
   これは、大橋賢三が生まれてから十七年間に行った、ある行為の数である。
   ある行為とは、俗にマスターベーション。訳すなら自慰。つまりオナニーのことである。」


この小説は、ありえないことに、こんな書き出しで始まる。


  「山本リンダと由美かおる、どっちならヌケるか?」


そんなことを、延々と語り続ける少年達。
それを延々と描写し続ける作者。
延々と読み続ける読者…。

なんてアホな小説だ…。


恋愛と性欲。

10代男子特有の、
このぐちゃぐちゃして、どろどろして、どうしようもなく凶暴な衝動と、
ふれたら消えてしまいそうなほど、清らかで、はかなくて、純粋な感情と。

自分ではどうしようもないこの矛盾が、体の中でぶつかり合って、もみくちゃになって、
どうしようもなくて、でも答えはなくて。

果てしなく落ちていく、自己嫌悪。


世の男子諸君なら、ほぼ100%の人が、「うんうん…。」とうなずくんじゃないかな?
女子達が知らない、男子の影の一面。

なんだかわけのわからない衝動が体を突き動かすんだけど、
どうしたらいいのかわからない。

部活とかで体動かして発散するけど、それでもなくならない。
暴れ狂う何かの手綱を、必死で押さえつける毎日。


「何も知らぬくせに、映画や本の知識だけが頭の中でふくれあがっている。
 知識は要らぬプライドを生み、プライドは現実との軋轢を生み、
 耐えられなくなった少年は内へ内へと閉じていく。
 内向は何も生まず、そして知ることを恐れるのじゃ。」

ところどころで、重要な役回りをするジーさんの言葉。

知識と体験のバランス。
知識と体感のバランス、って言ってもいいかもしれない。

知っている、っていうことは、恐ろしい。
知る、って言うことと、分かるって言うこと、
そして、自分のものにしていくってことは、きっと大きくかけ離れている。

「書を捨て、街に出よ」

そういうことかな。



俺ももし峯田のように、あの頃 『グミ・チョコレート・パイン』に出逢っていたら、
どうなっていたのかな。


  「オレたちは何かができるはずだ。人とは違う、何かができるはずだ。」


悶々とする日々の中、自分は周りのやつとは違う、
必ず何かできるはずだ、人とは違う、何かができるはずだ。

10代の頃、誰もが胸に抱き、信じている。
だけど、その「何か」が見つからない。

かならずどこかにある、その「何か」が見つからない。


葛藤の中で、迷いの中で、自己嫌悪の中で、
だけど確かに、あの頃は生きている実感があった。

無駄に煮えたぎる抑え切れない欲望と、
あの子の横顔を見るたびに、ちぎれそうに苦しくなる心臓と、
そして何の根拠もない、だけど確実な「何かできるはずだ。」っていう自信と。


オナニー、セックス、リビドー(性欲)。
ロック、音楽、バンド。
少年、少女、大人。

自己嫌悪、葛藤、人とは違う何か。

絶望、幸福、衝動。


なんだか分からないものが、
ごちゃ混ぜになって、だけど、ものすごい力を持って、
この小説の中には、存在している。


ライブハウスの描写の部分なんて、
あのなんともいえない空間が、空気が、
汗のにおいが、隣のやつとぶつかり合う感覚が、もうどうしようもなく上がっちまってる熱が。

今目の前に広がってるような、そんな錯覚。
生々しい、表現力。


大人になるとともに、いつの間にかなくしてしまいがちな熱が、
今も触れたら伝染してしまうくらいのアツさをもって、
この小説の中では、今でも静かに燃え続けてる。


今まさに、抑え切れない衝動と出口のない絶望に埋もれている17歳も、
そんなこと、もういってられないし、って大人ぶってる20代も、
そして、いつのまにかいろいろな衝動や感情や葛藤さえも、忘れてしまいそうな30代も。

熱をなくしちゃ、いけない。


  「本は人様を変えたりしない」


最後のパイン編の、解説の言葉。

確かに、本は人を変えることは、人の人生を変えることは、できないかもしれない。

だけど、本や、そして音楽との出会いは、
自分自身を変えたい、人生を変えたいと、いつまでも思っているだけの自分に、
自分自身を変えよう、人生を変えよう、って思わなければ何も始まらない、
ってことくらいなら、気づかせてくれる。


忘れていた熱を、あのころは確かに持っていた熱を、
ふと、思い出させてくれる。

「なにかできるはずだ。」
そう思っていた頃の、根拠のない熱を。


今日が昨日と同じ今日で、
何もない自分が、同じ場所にいつまでも座り込んでいる自分が、たまらなく嫌いで、
何かしなきゃいけないとは思っているけれど、ただ思っているだけの自分ならば。


是非一度、この小説を手にとってみて下さい。

はじめのページの、大槻ケンヂからのこんなメッセージが、
あなたを待っています。



  「オレはダメだな~」と思っている
  総ての若きボンクラ野郎どもへ、
  心からの心をこめて、本作を贈る。




熱を、思い出せ。




【 今までの “本のある生活” 】
http://blog.so-net.ne.jp/yazaru-archi-b-log/archive/c77299
ブログランキング・にほんブログ村へ

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 0

コメント 2

萩

うちみたいなしょぼいブログにコメントありがとうございました(今気づいた)。

ゴイステ・銀杏、いいですよね。

>俺ももし峯田のように、あの頃 『グミ・チョコレート・パイン』に出逢っていたら、
>どうなっていたのかな。

青春時代という貴重な時間を無為に過ごしてしまった僕としては、永遠に考えてしまう問題です。
青き初期衝動、あの頃にもうすこしそういうものがあったらな・・。

グミチョコの二巻・三巻は未だ読めずにいます。
そろそろ明日あたり買ってこようかな。
by (2008-06-09 02:03) 

やざる

>萩さん

あの頃、グミチョコに出逢っていたら、
何か変わっていましたかね?

もし、何も変わっていなかったら、って思うと、
ものすごく怖くなります。

だけど、だからこそ、出逢った今こそ、
何かやらかしてみようと思ってもいいんじゃないかな、って思います。

いつか、グミチョコと会ったのに何も変えられなかった自分に、
幻滅しないためにも。

by やざる (2008-06-09 21:49) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。