【シュガー&スパイス 風味絶佳】 タフさと優しさと [Movie with U]
「優しいだけじゃ、駄目なんだ。」
そんなこと、分かってた。
いや、分かってなかったのかなぁ。
それどころじゃなかった。
そんなことまで、考えていられなかった。
自分の感情だって、十分にコントロールできなかったから。
大切な人のことだって、今思えば、十分に思いやれてあげられなかった。
高校を卒業したての頃、
今思えば、本当に不器用で情けなくて、頼りなくて。
だけど今はもうなくしてしまったかもしれない、
とっても大切な貴重な柔らかい何かを、あの頃はきっと気づかずに持っていた。
そんなことを思い出させる、優しく切ない映画。
30を前にしてみると、「何言ってんだよ。」的に冷めて見えてしまうこともあるかもしれない。
そう思っている自分にふと気づいた時、なんだか少し寂しくなった。
そして、それじゃいけないと思った。
大人になるってことは、強くなるってことで。
強くなるってことはきっと、弱い部分を鍛え上げていくことで。
だけど、その弱い部分の裏側には多分、
触ったら悲鳴を上げそうなくらい柔らかな部分があって。
その柔らかさと優しさは、もしかしたら比例しているのかもしれない。
スクリーンの柳楽くんは、頼りなさ過ぎて小突いてやりたくなる反面、
その純粋さがまぶしくて、うらやましかった。
だれにでもきっと、ああいう時代はきっとあったはずなのに、
いつしかその姿を、スクリーン越しにしか見られなくなってしまった。
今はもう失くしてしまった何か尊いものを遠く眺めるようにしか、見られなくなってしまった。
本当は、すぐ側に自分の中に、その尊いものはあったはずなのに。
だけどもしかしたら、まだ間に合うかもしれない。
スクリーンで微笑み会う、柳楽くんと沢尻エリカの笑顔に、
優しく突き刺されるような、柔らかい胸の痛みを感じるならば。
忘れたものを、思い出すことはできる。
少し、弱くなってもいいのかもしれない。
傷つくこともいいのかもしれない。
そしたら少し、人にやさしくなれるかもしれない。
明日を笑顔で迎えられるかもしれない。
大切なことを、少し思い出させてくれる映画です。
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